シチュを考えるために作ってみたものです。
ただし、私には文才などというものはなく、非常に拙いものになっていると思います。そのへんはご容赦ください。
GO!プリンセスプリキュア+美少女戦士セーラームーンSuperS ~永遠から黄昏に~
―どれだけの時間が過ぎたんだろう…
彼女…トワは突如として闇に覆われ、意識を失った。
ここがどこで、今がいつなのか、彼女には分からなかった。
重く閉ざされたまぶたが持ち上がる。その先も闇だった。
その闇の中に、2人の人影が映る…
「ようやくお目覚めか。希望のプリンセス」
重く、恐ろしい印象を受ける声が語りかける。その姿は、仮面をした女性の姿だ。
希望のプリンセス…トワのことを指している言葉だ…
動こうとしたが、動くことができない。
恐怖で身体が動かないのだろうか?
しかし、その疑問はすぐに否定された…
―何これ…何かに張り付けられて……
彼女の手足は、何か頑丈なもので固定されていた。
必死に抵抗しても外れる気配がない。視線を横に移すと、赤い壁が見える…
壁?違う。壁ではなく、板であった。赤い板に手足を固定させられ、身動きを取れなくされている。
「無駄だ。その術は、そう簡単には破れぬぞ」
さっきの声と同じ?
いや、さっきとは微妙に違う声だ。髪の長い、目の鋭い女性が見える…
―ここはどこ?あなた達は誰?これは一体、どういうことですの?
彼女は震えた声で尋ねる。
「私の名はディスピア。お前達ホープキングダムと敵対している者だ」
仮面の女性はディスピアと名乗った。
―ホープキングダムと…まさか、ディスダークの!?
彼女は知っている。ディスダークのことを…
ディスダークは、彼女がいるホープキングダムに侵攻している敵だ。
そのディスダークが、目の前にいる…
彼女は、ディスダークに囚われてしまったことを理解した。
―私をどうするつもりですの?
「先に隣の者がお前に用があると言っている。ネヘレニア、何をするつもりだ?」
ネヘレニアと呼ばれた女性…髪の長い、目の鋭い女性は、ディスピアに話しかけられると、静かに口を開いた。
「我が名はネヘレニア。新月の女王にしてデッドムーンの首領だ」
―デッドムーン?一体、何者ですの?
その名前に聞き覚えはなかった。ネヘレニア…デッドムーン…兄、カナタの口からも出ることのなかった言葉だ。
「妾はある目的のため、ディスダークに手を貸しておる。我らの目指すところは同じなのでな」
ネヘレニアはこう答える。すかさずディスピアもこう答える。
「私の目的は知っていよう?そのためには、この者と手を組むが最善と思ったのだ」
何を言っているのか分からない。なぜこんな状況になったのかの説明にもなっていない。
一体、ディスダークやデッドムーンはトワに何を求め、何をするつもりなのだろうか?
その疑問が、トワの脳内を駆け巡る…
―私に用があると言いましたが、なんですの?
トワは精一杯声を振り絞り、ネヘレニアに質問する。
「貴様の夢に用がある。貴様が持つ美しい夢にな…」
夢?なぜそんなものを求めるのだろう?
トワをめぐる疑問の解決にならない言葉だった。
「貴様の夢に可能性が高いのだ。貴様の夢に、あれが存在するかもしれぬからな。故に、面倒ではあったが、こうさせてもらった」
こんなものに磔にされている理由がそんなことだったなんて…
一体、自分に何があるというのだろう?
自分はプリンセスプリキュアではない。ましてや、グランプリンセスでもない…
人と変わらぬ自分に、何があるというのだろう?
―わ、私をどうするつもりなのですか!
「見せてもらうまでだ。貴様の夢をな…」
ネヘレニアの口からこう発された直後、ネヘレニアから強い力が放出される…
「夢の鏡よ、出でよ!」
ネヘレニアは漆黒の球体を放った。球体は空間内を跳ね回り、トワの背後に回り、トワめがけてものすごいスピードで飛んでくる!
殺される…!?トワはそう恐怖した。次の瞬間…
―あああぁぁぁぁぁーっ!
球体はトワの背後から命中し、強烈な力を発する。
胸から何やら鏡らしきものが出てくる。ピンク色の枠をした鏡だ。
光を発しながら出現する鏡をただ見ていることしかできない。鏡が姿を現すごとに、強い苦痛が弱まっていく。
完全に鏡が姿を現した時、トワは力なくうなだれた。
「ほぉ、これが夢の鏡か」
ディスピアは興味ありげに、トワから出現した鏡を見る。
―夢の…鏡…?
「それが貴様の夢の鏡だ。貴様の夢が、その中に映っているのだ。だが、これは妾が求める夢ではない」
ネヘレニアはそう言い放つと、ディスピアが尋ねる。
「夢は確認せぬのか?確認せずして、なぜそう断言できる?」
「妾が求める夢の鏡は、金色に輝くもの…ゴールデンミラーだ。これは、普通の夢の鏡だ」
ディスピアの質問に、ネヘレニアはこう返した。
―ゴールデンミラー? 一体、それは…
トワは状況が理解できなかった。あれだけの苦痛を受け、抜かれた鏡が求めるものでなかった…
この苦しみはなんなのか…なぜ、こんな目に遭わなければならないのか…
「だが、希望のプリンセスの夢だ。奴がおらずとも、他に何かがあるかもしれぬ」
そう言うと、ネヘレニアは夢の鏡を自らの手元に寄せた。
何をするつもりなのだろう?
「では、見せてもらうぞ。貴様の美しき夢を。ディスピア、お前も見るか?」
「下らぬな。夢などといったもの、見るに値せぬ」
ディスピアは興味なさげだった。
「人間は下らぬ夢を抱く。俗物どもはとくに下らぬ夢を抱き、身の程知らずね幻想を見る。だが、妾が求めるものは、その夢にあるのだ」
ネヘレニアは夢の鏡を手に取り、両端を掴む。
「だが、貴様は俗物とは違う。希望のプリンセスともなれば、相応に特別な夢を抱くものだ」
―やめて、やめてください…
トワは懇願したが、ネヘレニアは聞き入れる様子がない。
ネヘレニアは夢の鏡を左右に引っ張った。ゴムのように夢の鏡が伸び、そこから光が発せられる。
次の瞬間、ネヘレニアは夢の鏡に顔を近づけた。
―え…?ああぁっ!
トワを奇妙な感覚が襲う。夢の鏡を伸ばされ、何かをされているという苦痛はあった。
しかし、それ以外にも感覚があったのだ。何かを見られている、そんな感覚が…
―あっ、や、やめて…
トワは苦痛とともに、自分の抱く夢を他人の目にさらされていることへの恥辱を感じていた…
苦痛とともに襲いかかる恥ずかしさ。その感覚に、トワは苦しげな表情を浮かべながらも、頬を赤らめていた。
―んっ、はぁ…やめ…見ない…で…あぁっ!
「さすがは希望のプリンセス、実に美しい夢を持っているな」
ネヘレニアは夢の鏡を引き延ばし、覗き込んでいる。
その様子を遠目で見るディスピア。無言であり、動こうともしない。
トワは耐え難い苦痛と恥辱に顔を歪ませ、必死に懇願する。
―やめてください…それ以上は…見ないで…んあっ!
だが、ネヘレニアは聞き入れようとはしない。
より深く夢の鏡に頭を入れ、さらに深層心理にある夢を見ようとする。
―は、恥ずかしいですわ…私の夢…見られて…いやあっ!
トワは苦しさと恥ずかしさに泣き叫ぶことしかできなかった。
ネヘレニアはトワの叫びなど耳に入らないようであった。
「素晴らしい夢だ。これだけの夢に、奴が巣食わぬのが不思議なくらいだ」
―や、奴…?
トワにはネヘレニアの言うことが理解できなかった。
いや、理解しようにも、苦痛と恥辱でそれを考えられないのだ。
「奴め、どこにいるのだ。奴を探し、あれを手に入れねばならぬというのに…」
ネヘレニアはようやく夢の鏡から頭を抜き、鏡から手を放した。
夢の鏡はゴムが戻るように元の形に戻る。同時に、発されていた光も収まっていた。
―あっ…はぁ…はぁ…はぁ…
トワは弱々しく息を荒げるだけだった。
事を終えたネヘレニアに、ディスピアが話しかける。
「ネヘレニアよ、プリンセスは目当ての存在ではなかったのであろう?」
「そうだ。この夢に奴が住み着くと厄介だ。夢の鏡ごと、こいつを始末する」
始末…その言葉にトワは涙を流した。
やはり、殺されるのだと…そう思わずにはいられなかった。
「いや、まだこの娘には利用価値がある。私に任せてもらおう」
「利用価値だと?夢の鏡を砕き、この娘をレムレスにすること以外にあるのか?」
ディスピアの一言によって、ネヘレニアは手を止めた。
次の瞬間、ディスピアが言葉を発した。
「この娘の夢を絶望に閉ざす。あとのことは、私の好きにさせてもらおう」
「何をするのかは知らぬが、お前のことだ。妾でも思いつかぬことを考えておるのだろう?」
そういった瞬間、ディスピアの手に闇が集まる。
「お前の夢、絶望に染めてやろう」
トワは唇をかみしめ、恐怖に身体を震わせた。
抵抗もできず、夢までも覗かれてしまったことだけでも絶望なのに、まだ絶望させるのか…
そう思わずにはいられなかった。
「希望のプリンセスよ、その夢を絶望の檻に閉ざす。そしてお前は、絶望のプリンセスとなる」
そういった瞬間、ディスピアより闇が放たれた。
―きゃああぁぁぁぁっ!
最初に感じたものよりも強い苦痛だ。
心に絶望が押し寄せる感覚に恐怖の表情を浮かべ、トワは絶叫した。
しかし、ディスピアは手を緩めようとはしない。それどころか、さらに力を強めてくる。
「絶望に染まれ!」
強烈な闇がトワを襲う。
トワは闇と青い炎に包まれ、そのまま意識を失った……
闇と青い炎が収まる。
その中から出たトワの姿は、可憐な少女の姿ではなく、気高さを感じさせつつも冷たい印象を与える姿へと変わっていたのだ。
「これで希望は失われ、絶望となった。この娘は今より、絶望のプリンセスとなったのだ」
「はじめから人質などに使うつもりはなかったのだな?」
ディスピアの目的は、トワを絶望に染めることだった。
絶望に身を焦がしたトワは、すっかりと闇に染まっていたのだ。
―ここは…私は…
「目覚めたか、我が娘よ」
ディスピアは、トワを娘と呼び始めた。そう、洗脳し、自らの手駒としたのだ。
「希望のプリンセスは絶望のプリンセスとなった。これを知れば、ホープキングダムの連中も絶望するだろう。だが、今は明かさぬ。その時になれば、な…」
ディスピアは恐ろしい考えを持っていた。
トワを自らの手駒とするだけでなく、ホープキングダムの希望を根こそぎ奪い去ろうとしていたのだ。
―お母…様?
「そうだ。お前は絶望のプリンセス、トワイライトだ。気高く、尊く、麗しく…絶望を与えるのだ」
刷り込みである。完全に自分をディスピアの娘と思わせ、忠誠を誓わせようというのだ。
希望を失ったトワ…いや、トワイライトは、それを自然と受け入れた。
―私は絶望のプリンセス、トワイライト。生まれながらにしてのプリンセスですわ
こうして、トワイライトは誕生した。
絶望のプリンセス…彼女は、絶望を与える存在となってしまったのである。
「ディスピア、デッドムーンが動けるようになるまで、しばらくの時間を要する。それまでの間、頼むぞ」
「それまでのことは、トワイライトがしてくれよう。トワイライトよ、ディスダークのため、戦うのだ」
―はい、お母様
戦いを知らぬ少女は、絶望のために戦う戦士となってしまったのである。
彼女はこの後、大きな運命と巡り合せることになる。それはまた、別な話になるだろう…
-FIN-